日本辺境論 (新潮新書)

「日本人には辺境人根性が無意識下に刻み込まれている」という前提から、先生のお話は始まる。

「我が国こそ世界の中心である」という中華思想に対し、「自分は世界の端に居て、状況を変動させる主体的な働きかけは常に外から到来し、私たちは常にその受動者である」という自己規定から出発する国民性。

それは、良いとか悪いとかのカテゴリーに分けられるものでもなく、日本人は「主体になることを望まない、敵をつくらない、遅速先後を論じない、強弱勝敗を語らない」という思想を深化させ、辺境性を逆手にとって、都合の悪いことは判らないふり、若しくは思考停止して一時的に愚鈍となり面倒な事態をのらりくらりと先送りする、アポリアを回避することで生き延びてきた稀でしたたかな国民なのだという指摘は、かなり言い当てていると思う。褒められるものでもないが、これ以外に辺境国として生き残る道もなかったのではないか。自らの国民性について肯定も否定もせず、ただ「こういうのもあり」と胎を括って、おのれのローカル精神を足場にこれからも万事にあたる。とことん、辺境でいこうではないか!という先生のメッセージが心強い。