冬の少年

鋭い感受性故に、想像が更なる想像を生み出してしまう少年時代。誰もがそんな時代を通り過ぎるのだとしても、殊更デリケートで内向的な主人公ニコラは、雪によって下界と切り離された「スキー教室」という小社会に放り込まれることで、向き合うべき現実と自ら生み出す夢想世界の間をさ迷うことになります。

彼が創造する白昼夢は、やがてリアルな信憑性を持ち始め、読者の私達は何が現実で何処までが彼の空想なのか判らなくなってきます。夢が現実と交じり合い縺れ合いながら、やがて意外な、しかし予想通りでもある悲しい結末へと繋がっていきます。

「嘘をついた男」もそうですが、静かに抑えた文体によって綴られる悲劇に、一層の哀感を感じさせられます。